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『えんぴつ祭り』

「ものを大切に」の精神体得
先輩の“チビ鉛筆”集めがヒントに
イベントはアイデア勝負

平治(筆名)

2001年1月17日(水)産経新聞静岡版”学びと教えの現場から”掲載

『えんぴつ祭り』

 数年前のこと、四年生の健君の家に家庭訪問した。私がお宅に着くやいなや、彼はすぐに話し始めた。
「先生、僕の宝物、見せてあげるね。」
 その宝物は菓子箱の中に入っていた。わずか2aあまりの短い鉛筆が、菓子箱いっぱいにあった。一年生の時から貯(た)めた使い古しの鉛筆であるという。
 彼は、鉛筆が短くなっても捨てないで、広告の紙を鉛筆に巻きつけて軸代わりにし、さらに使うという技を母親から教わり 、“チビ鉛筆”を、それはそれは大事にしていたのである。
 受け持ちの児童を健君のように育てたい、と願って二年後、私は二年生を担任することになった。しかし、元気はやたらとあったけれど、なかなかの猛者が多かった。私の願いとは程遠い現実が待っていた。

■「仕掛け人」は教師■

 つまらない授業と思い始めると、鉛筆でいたずらをし出す。鉛筆を噛(か)んでる子もいる。教室に転がっている鉛筆もある。鉛筆からの悲鳴は、子供達に聞こえる由もない。
 私は、健君の話をしてみた。そして考えた末の結論を語った。「短くなって削れなくなった鉛筆が100本貯まったら、『えんぴつ祭り』をしよう」と。
 かくして、鉛筆を丁寧に使う取り組みが生まれた。短くなった一本一本が掲示されるうちに、子供たちは鉛筆もノートも大切に扱うようになりつつあった。
 学習の一番身近にある鉛筆―。「大切にしなさい」とお説教をたれるのでなく、年間を通して、大切にしていることが目に見えるものとなる仕掛けを試みたのである。
 子供たちは、その気になっていった。

*  *  *

 私の提案から二カ月足らずで、短くなった鉛筆は100本を数えた。
 100本達成を祝っての『お祭り』は、当然のことながら、鉛筆と楽しむイベント目白押しである。

■替え歌まで作って■

 子供たちは考えるものだ。タイトルも例えば…

・ えんぴつ相撲
・ えんぴつ探し
・ えんぴつボーリング
・ えんぴつクイズ
・ えんぴつ削り競争
・ 劇「かなしいえんぴつとうれしいえんぴつ」

 どのようなゲームであったかは読者の想像に委ねよう。子供たちは鉛筆ひとつから、さまざまな遊びを考えてしまうものである。

 * * *

 『お祭り』の当日。黒板には鉛筆を車体とした車が飾られている。ロケットの絵も描かれていた。船体は、もちろん鉛筆である。背面の黒板には、「えんぴつのうた」という曲まで書かれている。「宇宙船に乗って」の替え歌を子供が作っていたのだ。それは、

♪えんぴつロケットにのって、元気に行こう
僕らは子供のえんぴつ探検隊
準備オッケー
出発オッケー
5・4・3・2・1発射
僕らを乗せて星の間を駆け回れ♪

といった調子である。表彰も考えられていた。当日のゲームのチャンピオンたちに、メダルが用意されている。それだけではない。短い鉛筆を一番多く集めた三人に金、銀、銅のメダルを授与するという隠し玉?さえあったのだ。
 そして『お祭り』のフィナーレを飾る終わりの言葉で、挨拶に立った男の子はこんな風に話を締めた。
「自分の鉛筆を2aになるまで使うなんてことは、生まれて初めてのことでした。勉強の時間に早く鉛筆短くならないかな、と思って、たくさん字を書くようにしました。家でも日記をたくさん書いて、鉛筆を使いました。
 先生が話してくれた健君のように、お菓子箱いっぱいにはまだまだならないけど、これからもずっと鉛筆をたくさん使って、短い鉛筆を宝にしていきます。今日はとっても楽しいお祭りでした。鉛筆さん、楽しませてくれてありがとう。」

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